打刻を忘れたと言われたら

社員からはこう聞かれます
- 今朝、出勤の打刻を忘れました。どうすればいいですか?
- 昨日の退勤を押し忘れていました。残業代はつきますか?
- 打刻を忘れたら欠勤扱いになりますか?
ひと言でいうと
【勤怠システム名】で打刻の修正を申請し、実際の出勤と退勤の時刻を入力してください。【承認者】が承認すれば、その時刻で勤怠と給与に反映されます。
打刻を忘れた社員が心配しているのは、その日の給与や残業代が減らないか、叱られないかです。直し方を伝えるときに、実際に働いた時間は記録を直せば給与に反映されると伝えると、隠さずに申告してもらえます。
- 1社員実際の出勤・退勤時刻を申請する
- 2上司入退館の記録などと照らして確認する
- 3上司承認して勤怠を修正する
- 4上司給与に修正後の時刻を反映する
出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(事業主向けリーフレット)」
答えるときに押さえること
1会社には、始業と終業の時刻を記録する責任があります
厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を定めています。このガイドラインでは、会社は社員の労働日ごとの始業と終業の時刻を確認し、記録することとされています。原則の方法は、上司などが直接見て確認するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録をもとに確認するかのいずれかです。
労働安全衛生法でも、会社はタイムカードやパソコンの使用時間の記録などの方法で社員の労働時間の状況を把握し、その記録を3年間保存します。こちらは管理監督者も対象です。打刻の記録は、会社がこうした義務を果たすための土台なので、忘れた日も実態に合わせて直します。ガイドラインの対象は、労働基準法の労働時間の規定が適用されるすべての事業場です。
2修正は本人の申告を受け、社内にいた時間の記録と照らします
打刻を忘れた日は、本人に実際の出勤と退勤の時刻を申告してもらい、上司が承認して記録を直します。ガイドラインは、自己申告で時間を把握する場合の措置も示しています。入退館の記録やパソコンの使用時間など、社内にいた時間がわかるデータと申告に大きなずれがあれば、実態を調べて補正します。
社員が申告できる時間に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる扱いもガイドラインで認められていません。「打刻を忘れた日は定時で入れておいて」と一律に指示すると、実際と違う記録が残ります。修正した記録には、誰がいつ、どの記録をもとに直したかを残しておくと、後から確認を求められたときに説明できます。承認する上司にも、申告された時刻の根拠を確かめてから承認するよう伝えておきます。
3打刻を忘れたことを理由に、働いた分の賃金は減らせません
賃金は、その全額を社員に支払うのが原則です(労働基準法24条)。打刻を忘れた日でも、実際に働いていれば働いた時間の賃金を払い、残業をしていれば残業代も払います。打刻がないことだけを理由に、欠勤として給与から引くことはできません。遅刻や早退の扱いは、実際の出勤と退勤の時刻を確かめてから判断します。
打刻忘れが続く社員に対して、就業規則で減給の制裁を定める場合も上限があります。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1までです(同法91条)。まずは本人への声かけと、仕組みの見直しで回数を減らします。
4賃金台帳にも、直した後の労働時間を記入します
ガイドラインは、会社が社員ごとに賃金台帳を正しく作ることも求めています。記入するのは、労働日数、労働時間数、休日労働の時間数、時間外労働の時間数、深夜労働の時間数です。打刻を直したら、給与の締めまでに勤怠の記録に反映し、賃金台帳の時間数とずれが出ないようにします。
なお、管理監督者や裁量労働制などのみなし労働時間制の社員は、このガイドラインの対象外です。それでも会社には健康を守るために労働時間を適正に管理する責任があるので、これらの社員の打刻忘れも放置しないように伝えます。
5忘れが続く社員や部署には、気づける仕組みを用意します
同じ社員が何度も忘れる場合は、勤怠システムの打刻漏れの通知や、パソコンの起動と連動した打刻など、忘れても気づける仕組みを検討します。修正申請の締め切りを給与の締め日より前に決めて伝えておくと、給与計算の直前に修正が集中しません。
在宅勤務や直行直帰で打刻できない日の扱いも、打刻忘れと一緒に聞かれます。始業と終業をどの方法で報告するかを決め、社内FAQで打刻忘れの答えの隣に載せておきます。打刻の修正の件数を部署ごとに毎月数えておくと、忘れが多い部署に絞って声をかけられます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 打刻の修正の申請方法と承認者
- 修正申請の締め切り(給与の締め日との関係)
- 修正のときに入退館の記録やパソコンの使用時間と照らすか
- 在宅勤務や直行直帰の日の始業・終業の報告方法
- 打刻忘れが続いたときの対応(声かけの手順、懲戒の規定の有無)
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 出勤や退勤の打刻を忘れたときは、どうすればいいですか?
A. 【勤怠システム名】の【修正申請の画面名】から、打刻を忘れた日と実際の出勤・退勤の時刻を入力して申請してください。【承認者】が承認すると勤怠の記録が直り、給与にもその時刻で反映されます。申請は【締め切り】までに出してください。打刻を忘れても、実際に働いた時間は賃金の対象です。残業した日は、残業を終えた時刻を入力してください。時刻がわからないときは、【入退館の記録やパソコンの使用時間など、確認に使う記録】をもとに【承認者】と相談してください。
続けて聞かれやすいこと
退勤の打刻を忘れて、何時まで残業したか覚えていません
覚えている範囲で時刻を申告してもらい、入退館の記録やパソコンの使用時間、送ったメールの時刻などで確かめます。記録と申告が大きくずれるときは、上司が本人に事情を聞いて補正します。
上司に「残業の打刻はしないで」と言われました
会社は実際の労働時間を記録する必要があります。申告できる時間に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる扱いは、厚生労働省のガイドラインで認められていません。人事で事実関係を確かめるため、社員から日時と具体的な指示内容を聞き取ります。
在宅勤務の日も打刻は必要ですか?
在宅勤務の日も、会社は始業と終業の時刻を把握する必要があります。打刻するか、チャットやメールで始業と終業を報告するかは、会社のルールに従います。
答えるときに間違えやすいこと
- 打刻がない日を一律に所定の始業・終業時刻で埋めると、実際の労働時間と違う記録になります
- 打刻を忘れた日を欠勤として給与から控除しないようにします
- 減給の制裁は1回あたり平均賃金の1日分の半額までなど、法律の上限を超えられません