電車代やバス代の精算方法を聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 取引先に行ったときの電車代って、どうやって精算するんですか?
- ICカードで乗ったので領収書がないんですが、大丈夫ですか?
- タクシーを使った分も同じように出せますか?
ひと言でいうと
1回3万円未満の電車・バスの運賃は、税法上インボイスが要らないので、社内で決めた方法で日付・区間・金額を申請してもらえば足ります。タクシーや飛行機は領収書を受け取ってもらいます。
社員が知りたいのは、領収書の出ない電車やバスの運賃をどう申請するかです。交通系ICカードで払うと紙の記録が残らないため、証明できるものがないと不安に感じています。
出典:国税庁「適格請求書等保存方式に関するQ&A 問104 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」
答えるときに押さえること
11回3万円未満の電車・バスの運賃は、インボイスがなくてよい
インボイス制度では、1回の取引が税込3万円未満の公共交通機関の運賃について、鉄道会社などのインボイス交付義務が免除されています。支払う側の会社も、帳簿に一定の事項を書けば、インボイスを保存しなくても消費税の仕入税額控除ができます。国税庁はこれを公共交通機関特例と呼んでいます。
帳簿には、通常の記載事項に加えて「3万円未満の鉄道料金」のように特例の対象である旨を書きます。この場合、相手方の住所や所在地は書かなくてかまいません。社員から見ると、電車代やバス代に領収書は要らない、ということです。ただし、税法で要らないことと、社内で何を出してもらうかは分けて考えます。
2特例の対象になる乗り物と、ならない乗り物
特例の対象は、船、路線バス、鉄道やモノレールによる旅客の運送です。空港アクセスバスのような路線不定期運行や、予約して乗る乗合の運行も含まれます。特急料金、急行料金、寝台料金も対象です。一方、駅の入場料金は対象になりません。
タクシー、飛行機、レンタカーは、この特例の対象外です。タクシーや航空会社、レンタカー会社は簡易インボイスを発行できる事業に当たります。登録番号の入った領収書を受け取って提出してもらいます。
迷いやすいのはバスです。国税庁のQ&Aで対象とされているのは、道路運送法の一般乗合旅客自動車運送事業として運行するバス、つまり誰でも乗れる乗合バスです。団体で借りる貸切バスは、この一覧に入っていません。判断がつかない乗り物は、領収書を残してもらうよう伝えておくと、あとで困りません。
33万円は1回の取引の金額で判定する
3万円未満かどうかは、切符1枚ごとの金額ではなく、1回の取引の税込金額で判定します。国税庁のQ&Aでは、大人運賃13,000円の新幹線を4人分まとめて買うと、52,000円で判定するという例が示されています。この場合は特例の対象外なので、インボイスの保存が必要です。
1か月分をまとめた合計額で判定するわけでもありません。1か月の電車代が3万円を超えていても、1回ごとの乗車が3万円未満なら特例の対象です。複数人分をまとめて買ったときは、領収書を残してもらいます。なお、出張の旅費として社員に支給するものには、出張旅費等特例という別の扱いがあります。
4社内で出してもらう記録を決めておく
税法上インボイスが要らなくても、会社としては本当に業務で移動したかを確かめる必要があります。そのため、日付、訪問先、乗った区間、金額を申請してもらいます。経路検索の結果の画面や、交通系ICカードの利用履歴を印字したものを添付してもらう会社もあります。
通勤定期の区間と重なる移動を精算の対象にするかは、社員から質問が来やすいところです。定期区間を含む経路の扱いと、最安の経路ではなく速い経路を使ってよい条件も、規程で決めて案内します。交通系ICカードにチャージした金額の領収書は、どの移動に使ったかがわかりません。精算は乗った区間ごとに申請してもらいます。
5返事では「領収書は要らない」と「代わりに書くもの」をセットで伝える
「領収書は要りません」とだけ伝えると、社員は何も記録を残さずに申請してきます。要らない理由を説明するより、代わりに何を入力すればよいかを具体的に伝えます。
タクシーの扱いも一緒に聞かれやすいところです。タクシーは領収書が必要なことと、使ってよい条件(重い荷物がある、終電を過ぎたなど)をあわせて案内しておきます。そうすれば、同じ社員から続けて問い合わせが来るのを防げます。
新しく入った社員は、前の会社のやり方で申請してくることがあります。入社時の案内に、電車代の申請方法を1枚で載せておくのも手です。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 電車・バス代の申請に使うシステムと、入力する項目
- 経路検索の画面や交通系ICカードの利用履歴を添付してもらうか
- 通勤定期の区間と重なる移動の扱い
- 最安の経路以外(特急、新幹線など)を使ってよい条件
- タクシーを使ってよい条件と、領収書の提出方法
- 近距離の外出と出張を分ける基準(距離や時間)
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 電車やバスで取引先に行ったときの交通費は、どうやって精算しますか?
A. 【経費精算システム名】で、日付・訪問先・乗った区間・金額を入力して申請してください。1回の運賃が3万円未満の電車・バスは、領収書は不要です。【経路検索の結果の画面を添付してください。】
通勤定期の区間と重なる部分は【精算の対象外】です。特急や新幹線を使う場合は、【事前に上長の承認】を受けてください。
タクシーや飛行機を使った場合は、領収書が必要です。わからないことは【経理担当の連絡先】までお問い合わせください。
続けて聞かれやすいこと
新幹線の切符を4人分まとめて買いました。領収書は要りますか?
3万円未満かどうかは、1回の取引の合計額で判定します。4人分の合計が3万円以上になった場合は特例の対象外なので、領収書を残してもらいます。
ICカードの利用履歴が印字できません。
税法上、3万円未満の電車・バスの運賃にインボイスは要りません。社内で履歴の添付を求めている場合は、経路検索の結果の画面など、代わりに出せるものを決めて案内します。
タクシーのレシートに登録番号がありません。
タクシーは公共交通機関特例の対象外です。登録番号のない領収書でも精算はできますが、消費税の扱いが変わるので経理で区別して処理します。
答えるときに間違えやすいこと
- タクシーや飛行機にも3万円未満の特例が使えると案内してしまう
- 3万円未満かどうかを、切符1枚ごとの金額で判定してしまう
- 交通系ICカードのチャージの領収書で精算を受け付けてしまう