領収書をなくしたと言われたら

社員からはこう聞かれます
- 領収書をなくしてしまったんですが、精算できますか?
- タクシーの領収書をもらい忘れました。どうすればいいですか?
- カードの明細はあるので、それで代わりになりませんか?
ひと言でいうと
まずお店に再発行を頼めるか確かめてもらい、無理なら社内の紛失届の手続きで申請してもらいます。インボイスが残らない分は消費税の控除ができないことがあるので、経理で区別して処理します。
社員が一番気にしているのは、立て替えたお金が戻ってくるかどうかです。叱られるのではという気まずさから、問い合わせが遅れることもあります。経理としては、代わりに手に入る書類があるか、消費税の処理に影響するかを確かめます。
- はい再発行してもらった領収書やPDFを提出してもらう
- いいえ3万円未満の電車・バスなど、帳簿のみで控除できる取引か
- はい領収書なしで、社内で決めた方法で申請してもらう
- いいえ領収書紛失届に日付・支払先・金額・経緯を書いて申請する
- はい
出典:国税庁「適格請求書等保存方式に関するQ&A 問104 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」
答えるときに押さえること
1最初に、再発行やデータでの再取得ができないか確かめてもらう
領収書をなくしたと聞いたら、まず代わりの書類が手に入らないかを確かめてもらいます。お店やホテルに問い合わせると、再発行に応じてもらえることがあります。応じるかどうかはお店の判断なので、断られることもあると伝えておきます。
ネットで買った物や、配車アプリで呼んだタクシーは、購入履歴のページや受信メールから領収書を取り直せることがあります。メールで届いた領収書のPDFは、それ自体が正式な書類です。電子帳簿保存法では、データで受け取った領収書はデータのまま保存するので、印刷した紙だけでなくPDFも提出してもらいます。
2カードの利用明細は、領収書の代わりにならない
「カードの明細があるから大丈夫」という声はよく聞かれます。国税庁の資料「インボイス制度 応用編(令和8年5月)」は、カードの利用明細書を取り上げています。利用明細書は、一般的にインボイスの記載事項を満たさないとされています。そのため、明細の保存だけでは消費税の仕入税額控除ができません。
明細は、支払った事実を示す補助の記録としては役に立ちます。紛失届に添えてもらう資料としては有効です。ただし、消費税の控除に使う書類としては、お店が発行したレシートや領収書が別に必要です。社員には「明細は添付してかまわないが、領収書の代わりにはならない」と伝えます。
3再発行できないときは、社内の紛失届で申請してもらう
再発行ができない場合の手続きは会社ごとに違います。よくあるのは、社員が日付、支払先、金額、内容、なくした経緯を書き、上長の承認を受ける「領収書紛失届」や「支払証明書」です。
紛失届で精算を認めるかどうか、上限額を設けるかは社内の規程で決めます。社員には、紛失届の書式と、あわせて出してほしい記録を案内します。記録の例は、カードの利用明細、予約確認メール、交通系ICカードの利用履歴などです。支払ったことと業務で使ったことが、第三者にもわかる形で残るようにします。
4消費税の控除ができるかは、取引の種類で分かれる
インボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために、帳簿とインボイスの保存が原則として必要です。領収書をなくし、代わりの書類も手に入らない場合、その分は原則として控除できません。紛失届は社内で作る書類なので、インボイスの代わりにはなりません。
ただし、インボイスがなくても、帳簿に必要な事項を書けば控除できる取引があります。1回の運賃が税込3万円未満の電車・バス・船の運賃や、社員に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち通常必要と認められる部分などです。
また、規模の小さい会社向けに少額特例があります。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5千万円以下の会社が対象です。2029年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れなら、帳簿のみの保存で控除できます。自社がこれに当たるかは、経理の責任者に確認しておきます。
社員への返事で消費税の話まで細かく説明する必要はありません。経理の中で「この支出はインボイスがない」とわかるように、会計システムの税区分や摘要で区別しておけば足ります。
5社員を責めるより、なくしにくい出し方を案内する
問い合わせてきた社員を責めると、次からはなくしても申告されなくなります。経理にとっては、記録のない支出が増えるほうが困ります。
返事の最後に、なくさないための方法を一つ添えます。受け取ったその日に経費精算システムのアプリで撮影して申請する、領収書は財布ではなく決まった封筒に入れる、などです。撮影した画像があれば、原本をなくしても内容は確かめられます。ただし、撮影したあとに原本を捨ててよいかは、会社がスキャナ保存の要件を満たした運用をしているかで決まります。原本の扱いは、自社の運用に合わせて別に案内します。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 領収書をなくしたときに使う書式(紛失届、支払証明書など)と提出先
- 紛失届で精算を認める上限額や回数
- 紛失届を承認する人
- 紛失届にあわせて出してもらう記録(カードの利用明細、予約確認メールなど)
- スマートフォンで撮影した領収書の原本を捨ててよい運用にしているか
- 自社が少額特例の対象になるか
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 領収書をなくしてしまいました。精算できますか?
A. まず、購入したお店やホテルに、領収書を再発行してもらえるか問い合わせてください。ネットで購入した場合は、購入履歴やメールから領収書を取り直せることがあります。メールで届いた領収書は、PDFのまま【経費精算システム名】に添付してください。
再発行ができない場合は、【領収書紛失届】に日付・支払先・金額・内容・なくした経緯を書き、【上長】の承認を受けて提出してください。カードの利用明細や予約確認メールがあれば、一緒に添付してください。カードの利用明細だけでは、領収書の代わりになりません。
紛失届で精算できるのは【1回あたり◯円まで】です。わからないことは【経理担当の連絡先】までお問い合わせください。
続けて聞かれやすいこと
電車代の領収書がないのですが、精算できますか?
1回の運賃が3万円未満の電車・バス・船の運賃は、インボイスがなくても帳簿の記載だけで消費税の控除ができます。紛失届は要らないので、社内で決めた方法(日付・区間・金額の申告など)で申請してもらいます。
紛失届を出せば、消費税の控除もできますか?
紛失届は社内で作る書類なので、インボイスの代わりになりません。帳簿のみで控除できる取引や少額特例の対象でなければ、その分の消費税は原則として控除できません。
お店に再発行を断られました。
再発行に応じるかはお店の判断です。社内の紛失届の手続きに進んでもらい、カードの利用明細など、支払ったことがわかる記録を添えてもらいます。
答えるときに間違えやすいこと
- カードの利用明細を、インボイスの代わりとして扱ってしまう
- メールで届いたPDFの領収書を印刷した紙だけで受け取り、データを残さない
- 3万円未満の電車代にまで紛失届を求め、社員に余計な手間をかける
- 紛失届を出せば消費税の控除もできると案内してしまう