領収書はスマホで撮れば捨てていいか聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 領収書ってスマホで撮ったら、紙は捨ててもいいですか?
- 経費精算アプリに写真を上げたんですが、原本はどうすればいいですか?
- 電子帳簿保存法で、紙はいらなくなったんですよね?
ひと言でいうと
会社がスキャナ保存の要件を満たした運用をしていれば、撮影して写りを確かめたあとの紙は捨てられます。そうでない会社では、紙の原本を経理に出してもらいます。
社員は、財布にたまる紙の領収書を早く処分したいと考えています。「電子帳簿保存法で紙がいらなくなった」と聞いて、どの会社でも捨ててよいと思い込んでいることもあります。
出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」
答えるときに押さえること
1捨ててよいかは、会社がスキャナ保存をしているかで決まる
紙の領収書を画像で保存し、原本を処分できるのは、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たして保存している場合です。スキャナ保存は、紙で保存する代わりに会社が選んで使える方法で、すべての会社に義務づけられているわけではありません。
経費精算システムに写真を添付していても、会社がスキャナ保存の要件に沿った運用をしていなければ、紙の原本の保存が必要です。社員への答えは、自社がどちらの運用かによって正反対になります。答える前に、自社の運用を経理の責任者に確かめておきます。
同じ会社の中でも、紙の領収書は原本を経理に集め、請求書だけスキャナ保存している、というように書類ごとに運用が違うことがあります。領収書について聞かれたときは、領収書の運用を答えます。
2スマートフォンで撮った画像も、条件を満たせば認められる
国税庁の一問一答(令和8年7月)では、スマートフォンやデジタルカメラも「スキャナ」に含まれるとされています。社員の私物の機器を使うことにも、法令上の制約はありません。
読み取りの条件は、200dpi以上の解像度と、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラーです。スマートフォンの場合は、書類の大きさと画素数で判断します。A4の書類なら約387万画素以上が必要です。画像の情報に「72dpi」と表示されることがありますが、これは規格上の表示で、実際の解像度を示しているとは限りません。
社員には「影や指が写り込まないように、明るい場所で全体を撮る」のように、具体的な撮り方を案内します。
3期限内に、改ざんを防ぐ仕組みへ保存する
撮影しただけでは足りません。決められた期間内に、タイムスタンプを付けるか、訂正や削除の履歴が残るシステムに保存する必要があります。
領収書の入力期限は、受け取ってからおおむね7営業日以内が基本です。事務処理の規程を定めていれば、最長2か月の業務サイクルが過ぎたあと、おおむね7営業日以内の入力でも認められます。
このほか、取引年月日・金額・取引先で検索できること、領収書などの書類は帳簿との関連が確認できることなどの要件があります。市販の経費精算システムにはこれらに対応した機能を持つものがありますが、会社がその機能を使う設定と運用をしているかは別に確かめます。
4紙を捨ててよいのは、画像と原本を見比べたあと
スキャナ保存の要件に沿って保存している場合は、読み取ったあとに画像と紙を見比べます。同じ内容であることを確かめれば、紙はすぐに捨ててかまいません。折れ曲がりで隠れた部分がないかも確かめます。以前は定期的な検査のために原本を残す仕組みがありましたが、2022年1月1日以後に保存する書類からはなくなりました。
ただし、入力の期限を過ぎてしまった領収書は、要件を満たさないので紙のまま保存します。社員には「撮影して、写りを確かめてから捨てる。期限を過ぎたものは捨てずに経理へ出す」と伝えます。
5最初からデータで受け取った領収書は、印刷で済ませない
ネット通販やアプリで受け取ったPDFの領収書は、スキャナ保存ではなく、電子取引のデータとして扱います。法人税の保存義務がある会社は、紙に印刷しても、データを消すことはできません。データのまま、決められた方法で保存します。
社員は、紙の領収書を撮影する場合と、最初からデータで届いた領収書の違いを意識していないことがあります。問い合わせへの返事では、データで届いたものはPDFのまま経費精算システムに添付するよう、あわせて伝えます。
サイトによって、領収書の受け取り方は違います。PDFでダウンロードできる場合は、そのファイルを保存します。画面にだけ表示される場合は、その画面のスクリーンショットを保存する方法も、国税庁の一問一答で示されています。どちらで出してもらうかを社内で決め、よく使うサイトごとに取り方を案内しておきます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- スキャナ保存の要件を満たした運用をしているか
- 撮影したあとの紙の領収書を捨ててよいか、経理に提出するか
- 撮影してから申請するまでの社内の期限
- 紙の原本を提出する場合の提出方法
- 撮影に使ってよい機器やアプリ
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 領収書をスマホで撮ったら、紙は捨ててもいいですか?
A. 領収書は【経費精算アプリ名】で撮影して申請してください。撮影した画像は、文字と金額がはっきり読めるか確かめてください。
撮影したあとの紙の領収書は、【画像を確かめたら捨ててかまいません/◯日までに経理へ提出してください】。受け取ってから【◯日】を過ぎて申請する領収書は、紙を捨てずに経理へ提出してください。
ネット通販などからPDFで届いた領収書は、印刷せずにPDFのまま添付してください。わからないことは【経理担当の連絡先】までお問い合わせください。
続けて聞かれやすいこと
撮った写真がぼやけていました。
金額や店名が読めない画像は、スキャナ保存の要件を満たしません。紙が残っていれば撮り直してもらい、捨ててしまった場合は経理に相談してもらいます。
感熱紙のレシートの文字が消えかけています。
文字が読めるうちに撮影して申請してもらいます。スキャナ保存をしていない会社では、コピーを取って原本と一緒に保存するなど、社内の扱いを決めて案内します。
領収書は何年保存するんですか?
法人の場合、領収書などの書類は原則7年間の保存が必要です。青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間です。画像で保存する場合も、同じ期間の保存が必要です。
答えるときに間違えやすいこと
- 自社の運用を確かめずに「電子帳簿保存法で紙は不要になった」と答えてしまう
- 経費精算システムに写真を添付したことを、スキャナ保存の要件を満たしたことと同じだと考える
- 入力の期限を過ぎた領収書の紙を捨ててしまう
- PDFで届いた領収書を印刷して、データを消してしまう