解説記事

社内問い合わせにAIを入れると、担当者の手間は増える?

始め方しだいで増えます。FAQの作り込みから始めること、AIの回答を全件確認し続けること、引き継ぎ先を決めないことが主な原因です。導入前に決めることと、手間が増えたかを確かめる記録の取り方をまとめました。

2026年9月14日公開

書類の束とノートPCを見比べて、導入の手間を考えている担当者

社内の問い合わせにAIを入れると、始め方しだいで担当者の手間は増えます。増えやすいのは、最初にFAQを作り込もうとするときと、AIの回答を担当者が期限を決めずに毎回確認するときです。反対に、先月よく来た質問に絞って始め、確認する範囲と引き継ぎ先を先に決めておけば、同じ質問に何度も答える時間は減らせます。

「かえって手間が増えるのでは」という心配は外れていません

カレンダーとノートPCを前に、導入後の数週間を思い浮かべる担当者

導入を検討する担当者からは「AIを入れて、かえって手間が増えるのでは」という声がよく出ます。心配しすぎではありません。新しい仕組みを入れると、少なくとも最初の数週間は、いつもの対応に準備と確認の作業が上乗せされます。

見るべきなのは、その上乗せが一時的に終わるか、ずっと続くかです。続いてしまう会社の進め方には、いくつか共通点があります。

手間が増えたままになる進め方

最初にFAQやマニュアルを大量に登録しようとする

いちばんよくあるつまずきです。「AIに正しく答えさせるには、先に材料をそろえないといけない」と考え、規程集や手順書を全部整理してから始めようとします。

ところが、普段の問い合わせに答えながら数百件のFAQを書くのは無理があります。登録が終わらないうちに試用期間が過ぎ、そのまま使われなくなるのはよくある流れです。

最初に載せるのは、先月実際に来た質問のうち、答えが決まっているものだけで足ります。経費精算の締め日を聞かれたらパスワードを忘れたと言われたらのような質問です。同じ質問が繰り返し来ている会社なら、10件ほどで始めても違いは出ます。

AIの回答を担当者が毎回確認している

「間違ったことを答えたら困る」という理由で、AIの回答をすべて担当者が読んでから社員に返す体制にすると、手間はほぼ確実に増えます。社員の質問を読み、AIの回答を読み、正しいかを判断する。自分で答えるより工程が1つ多いからです。

確認をやめる必要はありません。範囲と期間を区切ります。たとえば最初の2週間は全件を読み、その後は規程の解釈が絡む質問と、社員から「解決しなかった」と返ってきた回答だけを見る、というやり方です。

AIの回答を担当者が確認するか
導入から最初の2週間のうちか
  • はい
    全件を読む
  • いいえ
    規程の解釈が絡む質問か、解決しなかった回答か
    • はい
      担当者が読む
    • いいえ
      確認の範囲から外す

AIが答えられないときの引き継ぎ先が決まっていない

AIが答えられない質問は必ず出ます。そのとき、社員が別の窓口に同じ内容を一から書き直す流れだと、社員も担当者も手間が増えます。担当者は「AIに何を聞いて、何と返ってきたのか」を聞き直すことになります。

誰に引き継ぐか、引き継いだあと何日以内に返事をするかは、導入前に決めておきます。

メールや電話の窓口を残したまま、どちらにどれだけ来ているか見ていない

AIの窓口を作っても、社員はしばらく慣れたメールや電話で聞いてきます。これは自然なことです。困るのは、窓口が2つになったまま、それぞれの件数を誰も把握していない状態です。担当者は2か所を見張り続けることになります。

電話やメールで聞かれたら、答えたあとに「次からはこちらでも聞けます」と一言添える。これを担当者の間で決めておくと、少しずつ新しい窓口に寄っていきます。

そもそも答えが決まっている質問が少ない

進め方とは別に、会社の問い合わせの中身によっては、AIを入れても手間があまり変わりません。来る質問の多くが「この場合はどうなりますか」という個別の判断を要するものなら、AIが答えられる範囲は狭く、引き継ぎが増えるだけです。

導入を決める前に、2週間ほど問い合わせを記録し、答えが決まっている質問がどれくらいあるかを数えておくと、この見込み違いを避けられます。

増える手間と減る手間を作業ごとに比べる

2人の担当者が2枚の書類を並べて見比べている

導入後の手間を作業ごとに並べると、次のようになります。最初に増える作業は、進め方で小さくできます。

導入直後と慣れてからの手間
導入直後慣れてから手間を小さくする工夫
回答の材料をそろえる増える新しい質問が来たときに1件ずつ足す先月多かった質問10件から始める
AIの回答を確認する増える決めた範囲だけ全件を読む期間を最初に区切る
答えが決まっている質問に答えるあまり変わらない減る聞かれたら新しい窓口を案内する
AIが答えられない質問に答える引き継ぎの分だけ増える変わらない引き継ぎ先と返事の期限を決める
回答の材料を直すほとんどない社内ルールが変わるたびに発生する見直す月を年間の予定に入れる
社員に使い方を案内する増えるほとんどない普段使っているチャットから聞けるようにする

「回答の材料を直す」の行は見落とされがちです。社内のルールが変われば、AIが参照している内容も直す必要があります。直さずにおくと、AIが古い答えを返し、社員から確認の問い合わせが来ます。この作業は導入直後ではなく、半年後や1年後に効いてきます。

導入前に決めておくこと

次の5つを紙1枚に書いてから導入すると、手間が増えたままになるのを防げます。

  1. 最初に載せる質問。先月来た問い合わせから、答えが決まっているものを10件ほど選ぶ
  2. AIに答えさせない話題。人事評価、個人の給与額、ハラスメントや体調の相談など、担当者が直接受けたいもの
  3. 回答を確認する範囲と期間。「最初の2週間は全件、その後は規程に関わる質問だけ」のように書く
  4. 引き継ぎ先と返事の期限。部門ごとの窓口と「翌営業日中」などの目安
  5. 社内ルールが変わったときに、AIの参照内容を直す人

2番目は、社員の事情に深く関わる相談を想定しています。産休や育休を取りたいと相談されたらのような相談では、制度の一般的な説明はAIにもできます。けれど、本人の状況を聞いて一緒に段取りを考える部分は、担当者が受けたほうが社員は安心します。

最初の1か月は、案内する範囲を段階的に広げる

いきなり全社に案内すると、確認と引き継ぎが一度に押し寄せます。次のように広げていくと、担当者が受けきれる量を保てます。

最初の1か月で案内する範囲を広げる
  1. 1担当者どうしでよく来る質問を聞いてみる答えがずれていたら材料を直す1週目
  2. 2問い合わせの多い部署を1つ選んで案内する回答を全件読む2週目
  3. 3全社に案内する規程に関わる質問と解決しなかった回答だけ読む3〜4週目
  4. 4導入前の記録と比べる確認の範囲を見直す1か月後

個人情報の扱いを確かめる

個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する事業者に対し、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。本人の同意なく入力する場合は、サービス提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを確認するよう注意を促しています。社員が家族や健康のことを書き込む可能性があるなら、導入するサービスの利用規約でこの点を確かめます。

手間が増えたかどうかを確かめる方法

1日の終わりに、クリップボードの記録用紙を1行ずつ埋める担当者

「増えた気がする」「減った気がする」で判断すると、導入直後の準備作業の印象に引っ張られます。導入の前と後で同じ記録を取り、数字で比べます。

記録は、問い合わせ1件ごとに1行書くだけです。

日付 手段 質問の要約 対応にかかった時間 結果
【月/日】 チャット、メール、電話、口頭のどれか 経費精算の締め日 【○分】 AIの回答で済んだ、担当者が答えた、引き継いだ、のどれか
【月/日】 AIの回答の確認 規程に関わる質問の確認 【○分】 修正した、そのまま

時間は5分単位の目安でかまいません。導入前に2週間、導入から1か月たった時点でもう2週間記録し、次の数字を比べます。

  • 担当者が自分で答えた件数
  • 担当者が問い合わせ対応に使った時間の合計
  • AIの回答を確認したり、材料を直したりした時間

3つ目を分けて記録するのは、ここが減らないと「窓口が1つ増えただけ」になっているからです。導入から1か月たっても確認の時間が変わらないなら、確認の範囲を見直します。確認している回答のうち、実際に直したものが何件あったかを数えると、どこまで範囲を狭めてよいかの判断材料になります。

社員の問い合わせにAIが回答し、答えられないときは担当者につなぐ仕組みとして、株式会社AutomagicaのカリスマAIがあります。Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chatに対応しており、フリープランは月額0円で月50回まで利用できます。

出典