社内FAQが読まれないのは、FAQを探す手間が、担当者に聞く手間より大きいからです。社員の言葉で書かれていない、古い情報が混ざっている、どこにあるか知られていない。どれも社員に「聞いたほうが早い」と思わせます。立て直すときは、最初から全部の質問をそろえようとせず、実際に来た質問への返信をそのままFAQにして、10件ほどから始めます。
社内FAQが読まれない理由
聞いたほうが早い
社員にとって、担当者にチャットで一言送るのはすぐ終わる作業です。FAQのページを開き、目次をたどって該当する項目を探すのは、それより時間がかかります。しかも見つかる保証はありません。
FAQを読んでもらうには、この差を縮めるしかありません。探しやすくするか、聞かれたときにFAQの場所を示して「次からはここを見ればいい」と覚えてもらうかです。
社員の言葉で書かれていない
FAQの見出しは、担当者の言葉で書かれがちです。「住所変更届の提出について」「通勤手当の支給基準」。社員が探すときに打ち込むのは「引っ越した」「定期代」です。
見出しと社員の言葉がずれていると、答えが載っていても見つけてもらえません。引っ越したときの手続きを聞かれたらでも、社員の実際の言い方を先に並べています。
古い情報が1件でもあると、全部が疑われる
締め日や申請の方法が変わったのに、FAQが前のままになっている。社員がその古い情報で一度失敗すると、ほかの項目も「どうせ古いだろう」と思うようになります。確認の問い合わせが来るので、FAQがあることでかえって手間が増えます。
どこにあるか知られていない
入社時の案内で一度伝えただけだったり、社内ポータルの奥の階層に置いてあったりすると、FAQがあること自体が忘れられます。
作り込んでから公開する進め方は止まりやすい
FAQを作り直すとき、多くの会社は項目の洗い出しから始めます。規程集を1ページ目から読み、想定される質問を書き出し、全部の回答をそろえてから公開する。この進め方は途中で止まりやすいです。
担当者は、普段の問い合わせに答えながらこの作業をします。数百件の回答を書き終わる前に繁忙期が来て、作業は中断します。社内問い合わせのAIを試すときにも同じことが起きます。最初にFAQやマニュアルを大量に登録しようとして手が止まり、そのまま使われなくなるのは、よくあるつまずきです。
もう1つの問題は、想定で書いた質問には、実際にはほとんど聞かれないものが混ざることです。時間をかけて書いた項目は読まれず、よく来る質問の回答は社員に伝わる言葉になっていない。そういうFAQができあがります。
作り込まずに始める手順
実際に来た質問から作ります。
- 直近1か月のチャットやメールを見返し、同じ内容に3回以上答えた質問を拾う。10件ほど集まれば始められる
- 質問の見出しは、社員が送ってきた文面をそのまま使う。「経費精算っていつまでに出せばいいですか?」のように書く
- 回答は、実際に送った返信をコピーし、個人名や日付などその人だけの情報を消して作る。末尾に最終確認日と担当窓口を書く
- 置き場所は、社員が質問を送ってくる場所のすぐ近くにする。チャットで聞かれるなら、そのチャットのタブやピン留めに置く
- 次に同じ質問が来たら、答えと一緒にFAQのリンクを送る
- FAQにない質問に答えたら、その週のうちに1件足す
5番目を続けると、社員は「聞くとFAQのリンクが返ってくる」ことを覚えます。聞くのをやめてもらうのではなく、聞いたついでにFAQの場所を知ってもらう順番です。
6番目は、1件ずつなら普段の対応の延長でできます。返信を書いた直後なら、答えの中身はもう手元にあります。
1件のFAQはこう書く
たとえば経費精算の締め日なら、次のように書けます。【】は自社の内容に置き換えます。締め日の答え方は経費精算の締め日を聞かれたらにまとめています。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 質問 | 経費精算っていつまでに出せばいいですか? |
| 回答 | 【毎月○日】までに、前月分を【経費精算システム名】から申請してください。締め日を過ぎた分は【翌月の精算】に回ります。 |
| 困ったとき | 領収書をなくした、締め日に間に合わない、というときは【経理の窓口】に先に連絡してください。 |
| 最終確認日 | 【2026年9月14日】 |
| 担当窓口 | 【経理部 経費精算の窓口】 |
読まれにくい書き方と比べると、違いは次のとおりです。
規程の条番号を書きたいときは、回答の最後に添えます。先頭に置くと、社員は答えにたどり着く前に読むのをやめます。
FAQの場所を知ってもらう
置き場所を決めたら、社員に知らせます。全社への案内は、FAQがあることより、何ができるようになるかを先に書きます。
経費精算の締め日、パスワードの再設定、有給休暇の申請方法など、よく聞かれる質問の答えを【社内ポータルのFAQ】にまとめました。夜や休日でも、担当者の返事を待たずに確かめられます。載っていない質問や、読んでもわからないときは、これまでどおり【総務の問い合わせチャット】に送ってください。
最後の一文は残します。「FAQを読んでから聞け」と受け取られると、社員は聞くこと自体をためらい、詳しい同僚に聞くようになります。
見つからなかった言葉を集める
社員から質問が来たとき、その答えがすでにFAQにあったなら、見出しの言葉が社員の探し方と合っていなかったと考えられます。そういうときは、社員が送ってきた言葉をメモしておき、FAQの見出しか本文に書き足します。社内ポータルに検索の記録が残るなら、何も見つからなかった検索語も同じように使えます。
- はい社員が送ってきた言葉を見出しか本文に書き足す
- いいえ答えたあと、その週のうちにFAQに1件足す
更新が止まらないようにする決めごと
- FAQごとに担当窓口を1つ決める。「総務部」ではなく「総務部の備品担当」のように書く
- 社内ルールや手続きが変わる時期を、年間の予定に書き込む。年末調整の書類の書き方を聞かれたらのように毎年時期が決まっている質問は、その前の月に見直す
- 最終確認日から1年たった項目は、内容を確かめて日付を更新する
- 規程や手続きを変えた人が、FAQの担当窓口に知らせる流れを作る
最後の項目がないと、FAQの担当者は変更を後から知ることになります。社員からの「FAQと違うんですが」という問い合わせで気づく、というのが一番避けたい知り方です。
FAQだけで問い合わせがなくなるわけではない
FAQを整えても、問い合わせはゼロになりません。Wi-Fiにつながらないと言われたらのように状況を聞かないと答えられない質問や、本人の事情で答えが変わる相談は残ります。FAQで減らせるのは、誰が聞いても答えが同じ質問です。
その分、担当者は状況を聞く必要がある問い合わせに時間を使えます。FAQの出来を問い合わせの件数だけで測ると、この変化が見えにくくなります。件数と一緒に、答えが決まっている質問が何件来たかを数えておくと、FAQが効いているかを確かめられます。
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