ITが苦手な社員から問い合わせを受けるときは、新しい仕組みを覚えてもらうより、社員が毎日使っているチャットや電話で聞けるようにします。そのうえで、問い合わせの分類を社員に選ばせず、答えは「画面のどこに何と書いてあるボタンを押すか」まで書きます。聞く側の手間を減らし、1回の返事で終わる答え方にすると、社員が迷って何度も聞き直すことが減ります。
ITが苦手な社員がつまずくところ
問い合わせの仕組みを作る側が思っているより、手前でつまずく社員は多くいます。よくあるのは次のような場面です。
- 社内ポータルや問い合わせフォームにログインできない。パスワードを覚えていない
- フォームの「カテゴリ」欄で、自分の質問がどれに当たるのかわからない
- 返ってきた答えに「ブラウザ」「キャッシュ」など知らない言葉が入っていて、続きを読むのをやめてしまう
- 会社のパソコンを持っておらず、スマホしか使えない
- 「こんなことを聞いていいのか」と思って、聞くのをためらう
最後の点は見落とされがちです。ITが苦手な社員ほど、同僚に聞いて済ませたり、わからないまま放っておいたりします。締め切りのある手続きだと、あとで担当者が個別に追いかけることになります。
新しい問い合わせの仕組みを検討すると、「うちの社員はITに詳しくないから使われないのでは」という心配がよく出ます。ただ、使われない原因の多くは社員の知識ではなく、入口の選び方と答え方にあります。
入口は、社員が毎日開いているものにする
新しいアプリや問い合わせ専用のサイトを用意すると、社員はインストールし、ログインし、場所を覚える必要があります。ITが苦手な社員はここで止まります。
普段の連絡に使っているチャットがあれば、その中で聞けるようにします。Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chat などです。社員が新しく覚えるのは「どこに送るか」だけになります。
| 入口 | 社員が新しく覚えること | 向いている社員 |
|---|---|---|
| 普段使っているチャット | 窓口の宛先 | 毎日チャットで連絡している社員 |
| 電話 | 窓口の電話番号 | 文字を打つのが苦手な社員、急ぎの用件 |
| 問い合わせフォーム | 開き方、ログイン、項目の書き方 | 書類の添付が必要な手続き |
| 新しいアプリ | インストール、ログイン、使い方 | ITに慣れている社員 |
現場の社員が会社のパソコンを持っていない場合は、スマホのチャットアプリで聞けるかを先に確認します。スマホで使えない入口は、その社員にとって存在しないのと同じです。
電話は残しておきます。チャットで3往復してもうまくいかないときは、担当者から「お電話してもいいですか」と切り替えるほうが早く終わります。
聞き方を社員に決めさせない
問い合わせフォームの必須項目が多いと、ITが苦手な社員は書くのをやめます。「カテゴリ」「急ぎかどうか」「対象システム」を選ばせるのはやめて、分類は受け取った担当者がします。
窓口の案内文にも、書き方の決まりを並べないようにします。
総務・人事・経理・パソコンのことでわからないことがあれば、ここに一言で書いてください。 「パスワードを忘れた」「印刷できない」だけでも大丈夫です。 画面の様子は、スマホで写真を撮って送ってもらえると早く答えられます。
スクリーンショットの撮り方を知らない社員もいます。「画面をスマホで撮って送ってください」と書くほうが伝わります。写真にパスワードや個人の情報が写っていないかは、担当者側でも確認します。
1回の返事で終わる答え方
ITが苦手な社員への答えは、次の4つを守ると聞き直しが減ります。
- 1通には1つの手順だけを書く。別の手順が必要なら、終わったのを確認してから送る
- 手順には番号を付け、1行に1つの操作を書く
- 画面に出ている文字を「」で囲んで、そのまま書く
- 最後に「できたか、できなかったか、一言返してください」と添える
Wi-Fiにつながらないと言われたときの答えで比べてみます。
書き直す前 ネットワーク設定からSSIDを選び直して、それでもだめならPCを再起動してください。
書き直した後 次の順番で試してください。
- 画面の右下にある、扇の形のマークを押します
- 一覧から「【社内Wi-Fiの名前】」を押します
- 「接続」を押します つながったかどうか、一言返してください。つながらなければ次の方法をお送りします。
スマホで読む社員には、1通の長さを画面に収まる程度にします。スクロールしないと続きが見えない長さだと、最初の数行だけ読んで操作を始めてしまい、途中の手順を飛ばします。手順が5つを超えるなら、前半と後半の2通に分け、前半が終わったと返事をもらってから後半を送ります。
- 1担当者1通に1つの手順を番号付きで送る
- 2社員読みながらそのまま操作する
- 3社員できたか、できなかったか一言返す
- 4担当者終わったのを確認してから次の手順を送る
書き直した後の文は長く見えますが、社員は読みながらそのまま操作できます。書き直す前の文だと、「SSIDとは何か」を聞き返されて、結局やりとりが増えます。症状ごとの答え方はWi-Fiにつながらないと言われたらやプリンターで印刷できないと言われたらにまとめています。
電話で受けたときの答え方
電話では、担当者から社員の画面が見えません。「右上のボタンを押してください」と言っても、社員が見ている画面が違えば話がかみ合いません。
電話で手順を案内するときは、先に社員に画面の文字を読み上げてもらいます。
いま画面の一番上に、何と書いてありますか。 青い四角のボタンがあれば、その中の文字を読んでもらえますか。
社員が読み上げた文字を使って、「では『保存』と書いてあるところを押してください」と案内します。「右クリック」「タブ」のような言葉は使わず、「マウスの右側のボタン」「画面の上に並んでいる見出し」のように言います。
電話を切ったあとは、話した手順をチャットで送っておきます。電話の内容は、社員があとで思い出せないことがよくあります。
- 1担当者画面の文字を読み上げてもらう
- 2社員画面に書いてある文字を読み上げる
- 3担当者読み上げた文字を使って押す場所を案内する
- 4担当者電話を切ったら、話した手順をチャットで送る
言い換えておくと伝わりやすい言葉
担当者が普段使っている言葉でも、ITが苦手な社員には通じないことがあります。窓口の担当者で言い換えを揃えておくと、誰が答えても同じ言葉になります。
| つい使ってしまう言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|
| ブラウザ | インターネットを見るアプリ(EdgeやChromeなど) |
| ログイン | 名前とパスワードを入れて画面を開くこと |
| 再起動 | 一度電源を切って、もう一度つけること |
| アカウント | 会社から配られた名前とパスワードの組み合わせ |
| URLを開く | 青い文字の部分を押す |
| ダウンロード | ファイルを自分のパソコンに保存すること |
| 申請 | 【勤怠システム名】の「申請」ボタンから届け出ること |
表の一番下のように、社内の手続きの言葉も言い換えの対象です。「申請してください」だけでは、どの画面で何をするのかわからない社員がいます。有給休暇の申請方法を聞かれたらのように、システム名と押すボタンまで書きます。
担当者の返し方で気をつけること
「マニュアルに書いてあります」とだけ返すのはやめます。ITが苦手な社員は、マニュアルを開く段階でつまずいていることが多いからです。リンクを付けるときは、該当する手順も本文に貼ります。
同じ社員から同じ質問が何度も来ても、責める言い方はしません。「前にもお伝えしましたが」と書かれた社員は、次から聞きにくくなります。答えるたびに手順を短く貼り直し、2回目以降は「保存しておくと次から使えます」と添えます。
パスワードの問い合わせは特に件数が多く、社員も慌てていることがよくあります。本人確認の手順を決めたうえで、パスワードを忘れたと言われたらの文例を使うと、落ち着いて対応できます。
拠点に社員が集まる日があれば、窓口への聞き方をその場で一緒に試してもらうのも有効です。一度自分で送ってみた社員は、次に困ったときも同じ場所に聞いてくれます。
聞き方を覚えてもらうのが難しい社員には、AIが一次対応する仕組みも選べます。株式会社AutomagicaのカリスマAIは、社員がチャットで送った問い合わせにAIが回答し、答えられないときは担当者につなぎます。Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chatに対応しており、フリープランは月額0円で月50回まで使えます。
